ニコライ・クリビンの「自由音楽論」解読の試み ― 芸術のコンテクストにおけるロシア・アヴァンギャルド音楽の基本理念 ―
An attempt to decipher Nikolai Kulbin's "Free music. Musical applications of the new theory of artistic creativity" - Basic philosophy of Russian avant-garde music in the context of art -
Author(s): Kenichiro TakahashiSubject(s): Music, Sociology of Culture, Pre-WW I & WW I (1900 -1919), Sociology of Art
Published by: Slavic Research Center
Keywords: Nikolai Kulbin; "Free Music Theory"; Russian avant-garde music;
Summary/Abstract: 本稿は、ロシア・アヴァンギャルド芸術全体に多大な影響を与えたニコライ・イヴァノヴィ チ・クリビン(Николай Иванович Кульбин, 1868–1917)のマニフェスト『生の基礎とし ての自由芸術』を、同時代の芸術の動きや思想に照らし合わせながら読解し、その芸術論の 音楽分野への適用である「自由音楽」の基本理念を明らかにすることを目標とする。 ロシア・アヴァンギャルドに関しては、国内外に多くの研究の蓄積があり、そこでは多くの 概念や手法が文学や美術、建築などの領域を横断して共通に見られることが前提とされる(1) 。 しかし音楽に関しては、他の芸術領域との関わりが注目されることは甚だ少ない。日本にお ける先駆的なロシア・アヴァンギャルド音楽研究の労作、安原雅之の論文でも、次のように、 芸術全体の動きと音楽の関わりは視野から外されている:「『マレーヴィチの絵画、思うに シュープレマティズムの彫刻、そして音楽の理解者はマチューシン』であり、またルリエの 知人でもあったクリビンは『H. ヘルムホルツの音楽に夢中になっていた』し、マチューシ ンとも知り合いだった。……この程度の関連が指摘できるに過ぎない」(2) 。
Journal: Slavic Studies
- Issue Year: 2017
- Issue No: 64
- Page Range: 163-181
- Page Count: 19
- Language: Japanese